根拠のない自信だけで生きてきた

ふざけた事を真面目に考察するネタブログです

30代男が初めての美容院に挑戦してあたふたした話

 

まず始めに言っておくが、30歳独身初めての美容院だからと言って、常に床屋で角刈り。ランニングにスウェットで常に外出するようなおしゃれに無頓着な人生を送ってきたわけではない。

 

服装には気を使っていたし、美容院に行かなかったのは、ただ単純に親父が美容師だったからである。

親父に切ってもらっていたから美容院に行かなかっただけである。そこを十分に理解してから、本記事は読んでください。

 

 

なお、人間にはどんなことだろうと初めてというのはある。初めてのお使いや初体験。遅い早いはあれど、初めてをバカにしてはいけないのである。

初めては何においても挑戦だ。

 

世界初の4回転ループ成功した羽生君も挑戦したから成功したのだ。初めてに挑戦したから金メダルを手にしたのだ。アダムとイブが、人類初の性交をしたから僕らは今生きているのだ。

 

今回はそういう次元の話だ。たとえあなたが週一で美容院に通うオサレマスターだとしても30にして初めて美容院に行ったという事実を、決して笑ってはいけないのだ。もしあなたがそれを笑うなら、あなたは今この世界にいないのだ。笑われたアダムとイブが性交をやめたら、あなたは生まれておらず、今の世の中はなかったかもしれないのだ。それを十分理解したならこの先に進んで下さい。

 

美容院というのはまさにオサレの塊ともいうべきもので、店内ではオサレ用語がさも当たり前のように飛び交う。

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そのためおおよそ日常的にオサレと接し、オサレとともに生きてきた人しか入ることが許されず、未熟者はオサレワールドに狂わされ、精神を侵され、ゲシュタルトの波に飲まれてしまう。

 

今日もそうだった。

 初めての美容院に緊張しながら入店し、席に案内された。

無造作に雑誌を置かれ、美容師が後ろに立ち唐突に言われた。

「サイドツーブロックにしてますか?」

 

名誉のために言わせて頂くと、【ツーブロック】という髪型は知っている。刈り上げ部分と刈り上げじゃない部分が共存しているいわゆる2面性を持った髪型のことだ。

 

僕は元々サイドを刈り上げていた。

だからそう聞いてきたんだろうが、日常的にツーブロックという言葉と馴れ合い、共存していない僕にはイマイチ意味がわからなかった。

 

人間というのは、たとえそれが知っていた言葉だとしても、引き出しの浅いところにあるか深いところにあるかで別のものが出てきてしまうのだ。

突然「ツーブロック!」と言われた僕は即座に髪型につなげることができなかった。何を思ったのかそれを脳内で英語に変換し「tweeblock」と思い描いた。そしてそこから導き出されたものは「seableeze」であった。

なぜかは知らない。おそらく語感というか字面だ。

「seableeze」とは爽快感を売りにした商品を出しているブランドでその中にシャンプーがある。僕の美容院という空間に置いてツーブロックはseableezeよりも遥か奥底にしまってあったのである。

 

そして問われているのはシャンプーのことだととっさに判断したのだ。

ツーブロックは使ってません」

 

美容師は硬直した。なぜなら僕の髪型はまさにツーブロックそのものだったからである。

 

そもそもサイドを刈り上げている時点でそれはツーブロックなのだ。わざわざ確認する必要もない。いや、美容師的にはこの刈り上げが意図的なものか、それとも偶発的なものなのかを確認する必要があったのかもしれない。

 

つまり僕の「ツーブロックは使ってません」という答えは、ツーブロックを意図していません。という意味の返答になるのだ。

 

それにしても意図的でなく偶発的に刈り上げが発生することなんてあるんですかね?もしかしたら他の客で寝返りが異常に激しく、意図せずに枕との摩擦でサイドが擦り上げられてしまった人が以前に来たのかもしれない。

僕はそうではない。言ってから気づいたのですぐに「あっ!ツーブロックにしてます!」と言いなんを逃れたのだが、席について早々に難問にぶち当たったのである。

 

次に美容師に今日はどんな感じにしますか?と問われた。

そのそも僕はそれまでの人生、髪型はほぼ親父に任せてきた。

 

親父はいい感じにと言えば適当にやってくれた。

 

ただ僕もバカではない。それでは通用しないことは事前に調べてきた。

だからホットペッパーで写真をチョイスしてきたのだ。

 

「こんな感じで」

僕は写真を見せた。

「写真だと後ろも刈り上げてますね。後ろも刈り上げますか?」

 

「お願いします!」

僕は後ろの刈り上げを頼むことに成功した。元々これが本来の目的だったのでこの時点でほぼ目的は達成したも同然である。

だがまだ目標は達成していなかったのだ。

 

「何ミリにします?」

僕「!」

 

何ミリ…だと…?

そもそも人は数値を決めるときに、その数値でどういった結果が得られるか、ある程度予想を立てて行うものである。

だが僕の中に、何ミリでどんな感じになるかなイメージがないのだ。

 

なぜなら僕は坊主にしたことがない。親父にサイド刈り上げてもらった時も、「横刈り上げて」で事足りた。

 

だから何ミリでどうなるかな想定がないのである。

 

美容師は続けた。

「6ミリでどうでしょう?」

 

それを聞かれて僕はどうすればいいのだ。

6ミリがいいかどうかの基準が僕にはないのだ。

 

例えばカレーを作るときにじゃがいもどのくらい、人参どのくらい、にくどのくらい。そういう想定はできる。だがそれはカレーというものを知っていて、じゃがいもを知っていて、そしてどのぐらいの大きさかを知っているから決められるのだ。

 

僕はまだこの世界では生まれたての子鹿だ。美容院というのはオサレワールドにおいて、まだ立つことすらできていない子鹿だ。軽くひねれば首は容易に死んでしまうのだ。誰かが支えてくれなければ、僕は生きて行けないのだ。

 

支えを失い、今僕はまさに6ミリの波にのまれようとしている。6ミリの波に足元をすくわれ、6ミリの狭間に潰されるのである。

 

長くなってきたので次回に続きます。